この記事はKopKouNet Official Blogにより記載されていたものです。本人様に許可をいただき、こちらのサイトにも載せています。
どん判金ドブとは
2010年8月2日に放映された、テレビ東京のトーク・ドキュメンタリー番組「カンブリア宮殿」でカプコンを扱っており、社内のとある会議にて当時執行取締役であった稲船敬二(いなふね けいじ)氏が同社のプロデューサーに対して言い放った「どんな判断だ」「金をドブに捨てる気か」「何千万もかかっているだぞ」の略称。
ただし、稲船氏は大阪出身であり関西弁で話すため、実際には、「どんな判断や」「金ドブに捨てる気か」「何千万もかかってんねんぞ」と言い放っている。
「どん判金ドブ」は、計画性の甘さやお金をドブに捨てるような判断に対してツッコむときに使われる。また、言葉を置き換えやすいため、使いやすい(?)言葉としてインターネット上で流行しており、「ネット流行語大賞2010」にノミネートされた。
稲船敬二とは
稲船敬二(いなふね けいじ)は日本のゲームクリエイター、キャラクターデザイナー、実業家。1965年生まれ。大阪岸和田区出身。大阪デザイナー専門学校を卒業後、イラストレーターとしてカプコンに入社。入社後、「ロックマン」には開発途中にデザイナーとして参加。その後、ロックマンのプランナーであったAK氏がカプコンを退社したため、稲船氏がロックマンの制作を継ぐことになった。また、「鬼武者」、「デッドライジング」、「ロストプラネット」をプロデュースした。2010年11月をもってカプコンを退社し、同年12月に株式会社comceptを設立。2013年にはKickstarterにて「Mighty No.9」を発表。2017年にレベルファイブの子会社である株式会社Level5 comceptを設立。2024年現在は「ファンタジーライフi グルグルの竜と時を盗む少女」の制作に取り組んでいる。
どん判金ドブの真相
この発言が全国に放映された瞬間、特に匿名掲示板などで叩かれてしまいました。理由としては、この映像が「クリエイター足を引っ張る、クリエイティビティをぶち壊すとんでもない稲船敬二」に見えてしまったからです。
しかし、そのように見えるのはテレビの編集の問題だったのです。
稲船氏の自著である「どんな判断や!」で詳しく説明されています。
実は僕の仕事に対する考え方や姿勢のエッセイが、この言葉には詰まっています。
「どんな判断や!」著・稲船敬二、光文社(2011/9/17)
僕がこの言葉を発した背景には、次のような事情がありました。
カプコンでは、新ゲームのプリプロダクション、要は企画書レベルのものに対する制作費として、数千万円の予算をつけていました。
(中略)
これが、僕も含めた経営陣が出席する開発承認会議を通れば、数億円をかけてプロトタイプ(試作品)を作るという段取りになります。
(中略)
開発承認会議の前日、僕はあるゲームの企画書や画像をチェックしていました。なかなかいい出来です。
「うん、いいな。これでいくんやな」と聞くと、担当のプロデューサーも「これでいきます」と言う。
ところが、あとで別の人間から「実は、プレイアブルROM(ゲームとして動かせるROM)もあるんですけど、プロデューサーはそれを出したがっていないんですよ」という話を聞きました。
僕はすぐに思いました。
「承認会議に通らないと意味がないのに、持っているものすべてで勝負しない気か!?」と。
もし、それで承認されていなかったら、企画自体がボツになります。隠す意味などまったくない。
どうやらそのプロデューサーは完成度の低いプレイアブルROMを承認会議に出して、悪い印象を与えたくないと思ったそうです。
(中略)
承認会議で認められなかったら、数千マンもパーになる。だったら、そのとき持てるすべてをぶつけなくてはいけないはずです。
(中略)
すぐにプロデューサーを呼んで怒ってもよかったんですが、僕は思いました、「カンブリア宮殿」のネタにしようと、と。
(中略)
そうして、カメラが回る中で承認会議が始まります。
例のプロデューサーのプレゼンが終わったあとに、僕は「ちょっと待ってください。こういう映像があるんで見てください」と言って、経営陣にROMを見せました。
(中略)
プロデューサーに「おまえな、これ、何で隠してたんや?」と聞くと、「すみません」と言う。
そこで、「どんな判断や。金をドブに捨てる気か」と言ったわけです。
(中略)
…ただし、前後をカットされて。
(中略)
リスクを恐れず、全力を尽くす。これが僕の仕事に対する基本的な考え方です。
稲船氏は「(全力を出さないなんて)どんな判断や!金をドブに捨てる気か」と言いたかったのです。
テレビの編集って怖いですね…。
しかし実際に話を聞いてみると、リスクを恐れずに全力を尽くすという考えだった。クリエイターの足を引っ張るどころか支えている/励ましている稲船氏だったことがわかります。
その後の展開(?)
その後、稲船氏はこの言葉が気に入ったのかブログや自著、なんとゲームにまでどん判金ドブネタを使っていたりしています。
ブログ「どんな判断や」
「ロックマンDASH3 PROJECT」が開発中止に対して氏のブログ「Keiji Inafune だぜ!!」(inafking.exblog.jp)で「どんな判断や!」というタイトルのブログを書かれていました。
「開発中止」ってやっぱり悲しいことだよね。
開発に関わったスタッフは面白いゲームを作るために時には命を削って仕事をする。
そんな苦労は頑張って発売まで持ち込むことで報われることが多い。ゲームが売れるか売れないかは「運」も大きく左右するんで結果よりそこまでの過程の方が大事だと思うんだよね。
作りたくないゲームってのがあってはいけないんだけど、開発していると正直そんなタイトルもあったりする。
でも、ずっと作りたかったタイトルに関われた時、本当にモチベーション高くやる気のみなぎる仕事が出来たりするもんだ。そんなタイトルが「中止」と判断されたらって思うと本当に悲しくなるよ。
(中略)
でも、今回の経験が今後のゲーム作りに必ずプラスになると思うよ。
何が悪かったのか、何が良かったのか、何をすればいいのか、よく考えて今後に活かしてもらいたい。(中略)
最後に
「スタッフのみんな、本当に有難う。それからお疲れ様でした。」
ここでは「判断」を叱っているのではなく、慰めと感謝の意が述べられていました。
自著「どんな判断や」
先ほども紹介しましたが、稲船氏は自著を何冊か執筆しており、その内の一冊のタイトルに「どんな判断や!」と名付けています。
この本は稲船氏がどのよう判断をして今(2011年現在)に至ったのかを詳しく(?)説明しています。Amazonでの評価は低いですが、個人的には結構面白かったので気になる方は読んでみても良いかもしれません。
ゲーム「神次元ゲイム ネプテューヌV」
というわけでゲームにもどんな判断やが登場しました(?)。
神次元ゲイム ネプテューヌVというゲーム内に稲船氏本人が出現(?)しビーム(?)を放つ「ドンナハンダンダノヴァ」という必殺技が登場していました。…どんな状況や。
僕もよくわかりません。
ゲーム「バクダン★ハンダン」
「バクダン★ハンダン」は「どんな判断や」をテーマとした恋愛謎解きゲームです。稲船氏本人も登場しているそうです。
Twitter「こんな判断や!」
稲船氏がCCOを務めているLevel5 comceptの初ソーシャルゲームである「ドラゴン&コロニーズ」(現在はサービス終了)の公式Twitter(現X)にてどのようにしてドラゴン&コロニーズを作ったのか、を稲船氏本人が「稲船敬二のこんな判断や!」(#こんな判断や)というタイトルでツイートしていました。
ブルアカ「どん判金ドブ」
ちなみに、これは稲船さんが関与したわけではありませんが、ソシャゲのブルーアーカイブで「どん判金ドブ」が登場しているそうです。
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